「料理のセンス」を上げてくれた5冊の本(レシピ本を除く、2020年8月更新)
お勧めの料理本を紹介する記事を何本か見た。
私が料理のレシピをみないでも料理を作れるようにしてくれた、料理人三傑とそのバイブル本 - 勝間和代が徹底的にマニアックな話をアップするブログ
「200冊以上」料理本を読んできた料理人がオススメする料理本23選 - シェフガッキーの料理ブログ!
料理に関する本は、自分もこれまで読んできた。その中で、特に「料理のセンス」を上げてくれた本を紹介したい。「レシピ本」ではなく、調理をすることそのもののセンスを上げるものである。
ここでいう「センス」とは、レシピを見ずともある程度の料理が作れ、レシピを見てもある程度の工夫ができる、というものだ。自分も何十冊と料理関係の本を読んできたが、これら5冊は、今でも自分の中での哲学として残っている。
- 1 料理は自由なものだ~「男子厨房学(メンズ・クッキング)入門」
- 2 調理法の変換でレシピは広がる~「料理の四面体」
- 3 料理は弱火で~「弱火コントロールで絶対失敗しない料理」
- 4 食材は旬のものを~「季節を料理する」
- 5 献立の作り方~ワタナベマキのおいしい仕組み
- 水は使わず~「スープの教科書 新しいうまみの引き出し方」
- 料理は5種類~「新しいパパの教科書」
1 料理は自由なものだ~「男子厨房学(メンズ・クッキング)入門」
20年近く前の本なのに、未だに書店で並べられているのを見る名著。超初心者向けの本なのだが、未だに時々読み返す。
この本を読むと、特に「メニューを構想するセンス」が磨かれる。「料理はレシピどおりに作らなければならない」と考えている人は、まずこの本を読んでその固定観念を打ち砕いて欲しい。例えば調理というものは、包丁を使わず、肉を手でちぎっても良いのだ。料理は自由なものである。そこをまずは知って欲しい。
この本を初めて読んだ後、自分は毎日ちゃんこ鍋という「ごった煮」を作った。具材を牛肉、豚肉、時に海産物を入れて料理することで、腕を上げた気がする。「食品の変換」と「風土の変換」、そして「調理法の変換」を覚えると、自分のレシピは無限に広がるのだ。
次に紹介する「料理の四面体」とあわせて読んで欲しい。
2 調理法の変換でレシピは広がる~「料理の四面体」
また玉村さんの本。関係者のまわし者と思われそうだが、この本も勧めたい。こちらも10年以上前に入手して、未だに読み返す。
まずはⅥ章の「料理の構造ーまたは料理の四面体」についてを読んで欲しい。前述の本と比べ、調理法を変換させるフレームを提示している。このフレームを使うと、豚肉をひとつ取っても、焼くのか、ゆでるのか、蒸すのか、炒めるのか…と、多面的にメニューを考える事ができるのだ。
料理本のセレクトショップのようなコーナーがあれば、まずこの本がないか確認する。この本がなければ、おそらく自分とセンスが合わないのだろう…と感じる。なんてね。
それくらいの珠玉の一冊と思っている。
3 料理は弱火で~「弱火コントロールで絶対失敗しない料理」
この本を紹介したが、著者である水島弘史さんの料理哲学を学ぶのが最も重要。勝間和代さんもお勧めの1冊として紹介している。最近読んだ本の中で、料理の味をさらに一段階上げてくれた。初心者を脱却して、もうちょっとおいしい料理を作りたいな、と思ったときにお勧めしたい。
原則として弱火で調理すること、きちんと塩の量を測ること。「ダシ」は入れなくても、素材から出ること。応用的なものではなく、きわめて原則的な哲学を教えてくれる。実際に私も弱火で調理してみたが、モノによっては本当に味が変わって驚いたものである。
4 食材は旬のものを~「季節を料理する」
季節を料理する―一流の料理研究家たちが愛した幻の名著『百合さまの本』の復刊!
- 作者: 中江百合
- 出版社/メーカー: グラフ社
- 発売日: 2003/01
- メディア: 単行本
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色々と食材の扱い方や、調理法を説明しているが、自分がこの本から学んだことは1つ。「旬の食材を使うこと」の大切さである。今では、最初にレシピを考えてスーパーに行くよりも、スーパーや八百屋に行って、旬の食材が何かを見極めた上で、献立を作っている。それこそ2で紹介した「料理の四面体」の知識なんかを使って。
料理に対して、柔軟な姿勢と、豊かな気持ちを育ててくれた。四季折々の食材がある日本に、感謝したくなる一冊である。
似たコンセプトでは、食味歳時記 (中公文庫)なんかも読んだ。
5 献立の作り方~ワタナベマキのおいしい仕組み
基本的な味付け、献立の考え方、味の奥行きの出し方について学ぶ。玉村豊男さんの本と考え方が通じると感じた。
味付けは、以下の4つの要素が基本。
・塩分(味の基本)…しょうゆ、みそ、ナンプラーなど。
・油(コク出し)…サラダ油、オリーブ油、ごま油など
・酒(うまみ出し)…日本酒、ワイン、紹興酒、みりん、酢、レモン等
・奥行(アクセント)…スパイス、ハーブ(香りや辛味)ちりめんじゃこ、サクラエビ、ナッツ(触感)、だし汁、玉ねぎ、ネギ、セロリ
特に奥行だしに意識することで、味が単調でなく立体的になる。
献立については、まずはメインを考える。主菜(豚肉なのか魚なのか等)のみ、または旬の野菜を1品加えて調理法を考える。炒め物か、煮物か、マリネか。(食材の組み合わせ方も、①食感の違う素材の組み合わせ、②色の考慮、③季節をそろえる、といったところから考える。)主菜が決まったら、その調理法と別の副菜を考える。また1品は酸味のあるおかずにするとよい。
また献立を考えうえで、ウー・ウェンの本も良かった。次の2冊がお勧め。
料理は、足しすぎてはいけないという認識になる。
次点
水は使わず~「スープの教科書 新しいうまみの引き出し方」
スープのレシピ本だが、最初に紹介されているコツが最高。スープを作るコツは、塩を適量使って素材の水分を最大限に活用すること。そのまま煮るか、炒めて煮るか、蒸してから煮るか、適切な調理法を選ぶこと、である。
この本を読んで、無水の調理を行うことが増えた。塩を上手に使うことで、素材そのものの味を堪能しようとする姿勢も身につく。この姿勢は、どんなレシピにも役立つものだと思う。
そのほか無水スープは、丸元淑生のシステム料理学 (ちくま文庫)やSoup Stock Tokyoのスープの作り方なんかでも扱われている。
料理は5種類~「新しいパパの教科書」
ご覧のとおり、料理本ではなく、新しくパパになる人向けの本。
だが、この中で書かれていたことは、自分の料理哲学の1つとなっている。それは、料理には5種類あって、それぞれに適した料理を考えるということ。
その5種類は、以下のとおり。
- 自炊料理
- 男の料理(趣味)
- パーティー料理
- 家庭料理
- 病人用料理
以前の自分はこの5つをごっちゃにしていた。おしゃれなフランス料理を家で作って、調味料を余らせるということもあった(2と4の混同)。自炊は毎日しても、パーティー料理に持っていく料理は全然上達しないのが不思議だった(1と3の混同)。
ちょっと自炊料理がうまくなっても、パーティー料理にはそれにふさわしいレシピがあり、それを別に勉強しなければならない。そういうことを教えてくれた本だった。
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その他、ここには掲載しなかったが、池波正太郎シリーズ、東海林さだおのまるかじりシリーズ、食は広州にあり、檀流クッキング、調理場という戦場、日本料理の贅沢、なんかが面白かったですかね。また機会があれば、紹介したい。
「おいしさ」の科学 素材の秘密・味わいを生み出す技術 (ブルーバックス)というのは、焼く、煮る、蒸すなど、調理法による火の通り方の解説が興味深かった。おそらく男性好みの本と思われる。
献立作りの「小さなくふう」 ~スーパー主婦・足立さんの台所仕事~もなかなか良書。京野菜を取り寄せたり、蒸し牡蠣といったネットで珍しい食材を使ってみたり、さらに一歩踏み出した内容となっている。スタンバイコーナー、副菜コーナー、朝ご飯コーナーといった冷蔵庫の使い方、海水漬け(水500mlに塩大1の中に野菜をいれて半日~置く。)なども参考になった。献立を考えるのも、前日、前々日と調理法が重ならにようにすること(生・焼く・炒める・煮る・揚げる・蒸す・茹でる)を意識して、素材(ひき肉・鶏肉・豚肉・牛肉・魚介)と組み合わせる。
おいしいパターンで気ままに作るごはんはフライパン蒸し、焼きっぱなし、あえるだけ、というパターンに8~10種類のパターンを紹介しているのが興味深い。
有元葉子さんの本で、調理に関する共通概念というか、フレームワークのようなものを教えてくれる。好きな考え方で、玉村豊男さん、ウー・ウェンさんに次いで読むと良い。
・味付け以前に、食感にこだわる。
・山盛りの野菜も、「オイル蒸し」という調理法なら一度にペロリと食べられる。
・肉と炒めるときは、肉を炒めて味をつけ、野菜にはほとんど味をつけない。
・油は料理の「材料」ととらえて、良質なものを惜しみなくつかってください。おいしい油であげることをおすすめします。野菜の素揚げをした油ならば、二度くらいは使えます。でも肉や魚を揚げた油は汚れていますから、一度きりにして、私は使用済油を固める薬剤を使って処分しています。
旬の野菜を使うこと、手を使って調理しても良いことなど述べているが、参考になったのは調味料のパート。人によって求めるミネラルのバランスが異なるので、おいしいと感じる塩は異なる。なめ比べて好みのものを探すと良い。酢は米酢は酸味が強く、アップルビネガーやバルサミコ酢がよい。
調理法も、蒸し炒め、蒸し煮、蒸し焼き(ソテー)、蒸す、サラダの5種類。これらを組み合わせて、日々献立を考えると良い。
肉も野菜もレシピの重さと違うのだから、味付けをする際は、量よりも割合で覚えましょう、というもの。和食は、酒:みりん:醤油が1:1:1をベースとして、料理によって砂糖0.5を加えることや(肉じゃがなど)、酢を1加えること(南蛮漬け)がある。中華の場合は、砂糖:醤油:酒が1:1:3で、オイスターソース3を加えるなど、紹介している。ただバリエーションは多いので、暗記して使い回すというより、レシピをみる際は使う調味料と割合だけ暗記し、量は忘れてよい、くらいにとらえられるというもの。
毎日のごはんは、これでいい
料理家7人のプライベートごはんを紹介。
・味付けはいい加減でいい。
・一人分に必要なダシは、「粉だし」が便利
・ちょっと高い調味料を買うと、モチベーションアップ。
・同じ料理を何度も繰り返し作り、飽きたらひとつ省いて1つ足すマイナーチェンジをする。
・作り置きは、多めに作ったものをストック
・料理はメニューから考えないほうがいい。冷蔵庫の中にあるものから。
・塩の量が味のベース。
・1品は生のもの、1品は火をとおしたもの、程度の献立で良い。
・栄養は、タンパク質+野菜が揃えばOK。