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データサイエンティストになりたい、と夢想しながら読書記録を書くブログです。

矛盾を深め、そこに驚きと美しさの解を。ザ・ファシリテーター/IQは金で買えるのか/異邦人のまなざし

読んだ本

A ザ・ファシリテーター

 30代中盤の女性が、開発センター長に任命され、逆境の中(若さ、女性、乏しい知識)でもファシリテーターの知識を用い、組織を改革するフィクション。ストーリー調で読みやすく、ファシリテーターの使い方が分かる本。会社の大きい目標に対して人を従わせたいと思ったら、再度読むと良い。

B 異邦人のまなざし

 「社会心理学講義」の著者が2003年に書いた遊学記。著者は学生時代にユーラシア大陸を放浪した後、現在はフランスにて教鞭をとっている。「社会心理学講義」にて述べられた、学問に関する概念等は重複する部分も多い。研究者生活、特に人文学系で興味がある人にお勧め。この本は、著者自身がどのような疑問を持ち、迷い、そして今のポストに就いたのか、歴史を垣間見ることができる。著者は、40歳近くになっても自分は何がしたいのかと問い、その迷いに対し、対決を挑んだ。勝ち負けは分からないが、その姿勢は私も見習うべきだろう。

C IQは金で買えるのか

 世界の遺伝子研究の最新状況に関する本。米国では精子バンクが存在し、容姿や学歴、IQや病歴からドナーを選ぶことが普通だ。中国でも「天才」のDNAを集め、知能を決める遺伝子の働きを解明しようとしている。一方、遺伝といっても、知能に派少なくとも数百以上の遺伝子が複雑に絡み合い、決定的なものはわかっていない。統計的手法を用いて、知能が高くなる組み合わせについて調査されている。

 

学んだこと 

矛盾や対立を見つけ、掘り下げる。そこに質問を投げ、論理的関係性を見いだす。

 Aでは、ファシリテーターとは「人と人とのインタラクション(相互作用)を活発にし、創造的なアウトプットを引き出すもの」と定義づけている。集団の中で、考えを交流させ、価値の高い集合知を紡ぎ出す。

 Bは、物事の矛盾に対して安易な妥協を求めるのではなく、極限まで突き詰め、世界観の再構成を胎動させることが学術界では重要と説く。矛盾や対立は創造のエネルギー源であり、新しい発想を生み出す躍動となるのだ。

 そしてAはインタラクションを活性化させるには、 マイナスの感情、不必要な遠慮や配慮を排除し、積極的なプラスの感情を横溢させることが必要と説き、そのためのファシリテーションの技法やフレームワークを使うことが重要と言う。

 その際に質問も効果的である。全体を意識させる質問、分散(多様性)を意識させるもの、自分たちがコントロールできるものとそうでないものを意識させるもの、時間軸を意識させる、基準を意識させる等。

 このため、私も物事の矛盾や対立を認識して突き詰め、そこにファシリテーションの技法を用いることで、新しい発想や高い次元への思考を目指すようにする。また、自らの思考や意思決定においても、主観的な感情等からの影響を軽減するため、ファイシリテーションの技法を用いるようにする。

 

実証を試みる前に、まず理論的考察を行う。

 Bでは、 科学の発展においては実証以外に哲学的思索そして自由な想像力がまずは必要と説く。さらには研究テーマに対して、学問の領域区分を無視して思索することが重要で、歴史・社会学・人類学・哲学・心理学・生物学などを貪欲に参照すべきだと。

 

 この視点でCの知能に対する遺伝子的研究、統計学的考察を見るに、哲学的思索は果たしてあるのか疑問を持つ。そもそも知能とは何なのか。ノーベル賞を受賞した人間に共通する遺伝子組み合わせを認識した時、それは知能と呼べるのか。 本来であれば知能の定義が最初に来るのかもしれないが、技術の革新は、時として実証を先に進めてしまいがちな点、留意しておきたい。

 

プレゼンや報告書においては、驚きを大事にする。美しさを信じる。

 Bでは、手品のタネの考案は研究における創造とよく似ている、という言葉は印象的だった。確かに、どう見ても相容れない二つの減少・データの矛盾をあっと言うような手腕で解き、自然に有り得ない現象を柔軟な水平思考で創出する。筆者のやり方として、「問題に内包されている矛盾ができるだけ鮮明になるような記述をいったんした後で、それを意外な角度から解くという手法がいつも取られている。

 Aでは、案件には感嘆詞の「ワァオ」が必要という。つまり驚き。担当者が足しげく通ってクライアントのニーズをはるかに上回る内容で会ったり、短い開発期間であったりと、感動を生みだすような仕事というのが重要と言う。

その他

・学会への論文投稿や本の執筆は、誰にでもできるとまずは認識。(B)

・プレゼンや授業の行い方は、落語家を模倣。入念な準備と、その場の空気掴み等を心がける。(B)

・共通基盤の薄い国では、言語による理解を工夫している。そういう国では、ファシリテーションが発達する。(A)

ブレーンストーミングではアイデアに対する批判はご法度なので、いったん書き出してPAとかに記入し、記録することで敬意を払う。自分の思考も、色々と書きだして無駄なようなものは放置するようにする。(A)

・社内のベストプラクティスを学び、ノウハウや情熱を盗む。(A)

・何のためにやっているのか混乱していると思ったら、ツリー状に目的と手段を結んで構造を示す。ツリー構造を書きながら議論すると、全員で真の目的を共有できる。論理を構造化して、可視化して共有する。(A)

ホーソン実験:①労働者の行動は、感情から切り離しては理解できない。②感情は偽装されることが多く、面接では把握しにくい。感情は、その人の全体的状情況と併せてはじめて理解できる。(A)

・プロジェクトを進めていく上で、フレームワークが有効であるが、何より進めながら「研究」と「知識」を常に入れつつ、進めていくことが重要である。

 

ザ・ファシリテーター

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IQは金で買えるのか――世界遺伝子研究最前線

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異邦人のまなざし―在パリ社会心理学者の遊学記

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