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データサイエンティストになりたい、と夢想しながら読書記録を書くブログです。

たった一文のために。「ひとり飲み飯肴かな/久住昌之」

だらだらと読む本にも、強烈に印象に残る一文がある。

この本は、そんな本だった。

ひとり飲み飯 肴かな

ひとり飲み飯 肴かな

 

 

作者は、「孤独のグルメ」や「花のズボラ飯」「荒野のグルメ」なんかの原作者である。こう見ると、食に関する漫画原作の重鎮という感じだ。

 

構成は、「孤独の飲み飯」「今夜もひとり居酒屋で」「これ喰ってシメ!」からなる。正直言って、東海林さだおほど言い回しが洗練されているわけでもない。ブログを彷彿とさせるような文体で、無理に背伸びをせずに書く飲みエッセイという感じか。

 

実際、ほとんどの文章はあまり記憶に残らなかった。おそらく、等身大の文体で日常のことを記すスタイルなのだろう。

 

だが、以下の文章だけは気をひかれて、いつまでも印象に残るものであった。自分の中の価値観を変えてしまうような力を持っていた。

 

風呂 上がり直後の生ビールは、イメージほどおいしくない。「風呂から上がって、キンキンに冷えた生ビール!」っていうほど美味しくはない。

 

そうなのだ。

 

今まで意識したことはなかったが、風呂上りの冷えたビールは、あまり味がしない。なぜか脳に快楽なホルモンが出るようだが、言われてみれば味が薄い。

 

これまで風呂上りは、当たり前のようにビールを飲んでいた。体が水分を欲している状態でビールを流し込むと、「クーッ」という一言と共に、体にしみわたっていく。この感じが、たまらない。だが、味はどうかね?と言われると…。色々と考えがよぎる。

 

それ以外では、シウマイ弁当がうまそうとか、まんが道飲みが懐かしかったとこくらいか。だが、何よりも私の世界から「風呂上がりのビール」というものを消し去ってしまった。その影響力の大きさが全てである。