「学校をつくり直す」/苫野一徳
苫野一徳先生の新刊、「「学校」をつくり直す」、を読んだ。
2013年出版した「教育の力」の続編に近い。学びの個別化、協同化、プロジェクト化の融合を主張している点は、一貫していると感じた。今回の本においては、その考えが現場で導入どう実践されようとしているか、また苫野先生がどういう活動をしているか、そういった広がりを持ちつつ説明している。
このため「教育の力」を読んでからこの本を読むと、内容が理解しやすい。
学校の問題の根底にあるものとしては、生徒皆が同じことを、同じペースで、同じように学習するシステム。これが中心にあるということと主張する。そのため生徒は同じペースで学ばなければならず、そこから遅れてしまう生徒はいじめの対象になったり、落ちこぼれになってしまう。また生徒自身やりたいことがあっても、好奇心があってもさせてもらえない。そういった問題も発生している。
この問題に対して、学校の先生も多忙という問題がある。週に20時間以上の残業、これは過労死ラインに達する残業だが、小学校の先生の約3割があてはまるそうだ。これは給特法が原因のひとつという。学校の先生に対しては、給料の4%を月額払う代わりに、時間外勤務手当や休日勤務手当は払われない。このため学校の先生は働かされ放題となっている。
教育政策においては 、エビデンスに基づく政策決定(EBPM)があるが、これも問題だと筆者は感じているようだ。教育政策をエビデンスのみで決定してしまい、教育とはどうあるべきかという本質を洞察する哲学、そして教育的センスというものが欠如してしまっているという。
このような教育の現状に対して、苫野先生は、①探究をカリキュラムを中心におくこと、②「ゆるやかな協同性」に支えられた「個」の学びというものを取り入れていくこと。この2つを学校に取り入れていくことが重要だと述べている。しかしながら実際の現場において、個別化・協同化・プロジェク化の融合というのは難しい。苫野先生は、理解を得られずともまずは対話することが大切だと述べている。
「教育の力」で述べた主張、すなわち学びの個別化、協同化、プロジェクト化、を現代の文脈で読み直し、どう実践されようとしているか。そこに興味がある人は、読んでみると良いだろう。