【書評】「ウィーン愛憎」と「もうひとつの浅草キッド」に見るエネルギー
最近読んだ2冊について記録する。
1 ウィーン愛憎/中島義道
外人との喧嘩はこうやるのか!とコミュニケーション能力について役立つ指南書でもあった。著者が80年代にウィーンに留学した際の出来事を記したもの。
実際に現地人とどういう風にやりとりをしたかを記し、それに対して後で反省して、どうやりこめるべきだったか、を指南する。現代と状況は違っているのだろうが、それでも異国の人と喧嘩をしなければならない時は多い。その心構えのようなものを学ぶ上で、なかなかタメにもなる本であった。
おそらく日常においては、日本人は権利を主張して喧嘩をするのでなく、ゆずり合いという精神を持ち続けるであろう。だが、ビジネスでは違う。ビジネスでは、譲り合っている場合ではなく、徹底してこちらの権利を主張し、何かしら譲歩するにしても、戦略をもって進めなければならない。その時に勝負を分けるのは、「意気」というものである。それを伝えてくれる本である。
留学記であるので、比較的読みやすい。このため、実際に異国の人と喧嘩や交渉をする前なんかに一読しておくと、高揚した気持ちで臨めるのではないかと思う。
2 もうひとつの浅草キッド/ビートきよし
ツービート時代のビートたけしとビートきよしの青春を記したもの。ビートたけしによる視点ではなく、隣にいたビートきよしの視点で語られるのが興味深い。
当時ツービートは売れっ子であったそうだ。この本を読むと、やはりビートたけしの才能があり、そしてそれを立てるかたちビートきよしがいたからこそ、成功したのではないかと思う。バランスが大事なのだ。ドリフターズでは高木ブーが自分は一番目立たないポジションで良い、といっていた気がするが、こういう存在が重要だとわかる。SMAPも、木村くんばかりではまとまりがなくなる。ちゃんと、稲垣君や香取君もいてこその、SMAPだったのだ。
また当時のビートたけしの漫才に対する熱意というものも伝わってきた。
ビートたけしは、既存の漫才を打破しようと(狙ってかはわからないが)、寝転んで漫才をやったり、いろいろ工夫してやったそうだ。いかにして頭角を現すか。不遇の時代もあり、悔しい思いをすることもあったが、何よりもそのエネルギーや爆発力こそが、スターダムへと乗し上げていったのだろう。
2冊を読んだ感想
この2冊を同じタイミングで読んだのだが、何よりどちらの小説にもエネルギーがあふれていた。
現地人を相手に徹底して抗戦しなければならないという中島氏の強い意志。そして漫才の定石というものを破壊しようとするビートたけし。双方には類まれな熱量があふれており、自分ももっと熱く生きなければならない、と感じた。
日常がルーチンにあふれ、何かしら変化が欲しいと思う人にとっては、お勧めの2冊であろう。